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訪問サポートに関するQ&A

訪問サポート・トカネットに対するご質問や不登校・ひきこもりへの対応のご質問・ご相談にお答えします。

不登校・ひきこもりの本人・ご家族への「訪問サポート・メンタルフレンド活動」に関係するさまざまなご質問―訪問サポートとはどういういうことをするのか、どんな状態のときに来てもらえるのか、どんな人が訪問してくるのか・・・などについて、お答えします。

藤原宏美(一般社団法人トカネット・代表理事)

■Q&A・目次

  1. 勉強が遅れているのですが・・・。
  2. 来てもらっても「会えない」場合は、どうすればいいのですか。
  3. メンタルフレンドに不登校の経験者はいますか。
  4. 短期間の訪問もお願いできますか。
  5. 高校卒業を勧めて欲しいのですが・・・。
  6. うつ病ですが訪問してもらえますか。
  7. 家庭内暴力的ですがどうでしょうか。
  8. 週何回くらい来てもらえるのですか。
  9. 海外の高校を希望するのですがどうでしょうか。
  10. 高卒認定試験(旧、大検)を受けると言うが、気力がなくなっています。
  11. ひきこもりで26歳になります。
  12. 一人住まいでひきこもり的な17歳。
  13. 兄弟で不登校ですが、一緒に見てもらえますか。
  14. 現役大学生で友達のいない不登校の私ですが、メンタルフレンドの訪問サポートを依頼できますか。
  15. トカネットの親の会は、どんな活動をしていますか。
  16. メンタルフレンドの変更は出来ますか。
  17. 子どもは本当に変わりますか。どれくらいの時間ですか。
  18. メンタルフレンドによる訪問サポート活動の意義、活動内容、必要性を教えて下さい。

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●Q1:勉強が遅れているのですが・・・。

中1の娘ですが、転校を機に学校を休む日が増えてきました。最近は時々ですが、夕方みんなが下校してから保健室の先生にだけ会いに行っています。家族とは学校以外の話題は普通にしています。勉強の遅れを気にしているようで、毎日一人で勉強をしています。どういう形でメンタルフレンドによる訪問サポートを始められますか。

A1:「家庭教師のお姉さん」の形から始めてみてはいかがでしょうか。

保健室の先生に会いに行くということは、自分の気持ちを聞いて、受け止めてくれる人を求めていると思います。人間は一人でいると、どうしても不安になります。勉強の遅れを気にしているとのことですので、家庭教師のお姉さんという形でスタートされるといいと思います。勉強をしながら少しずついろいろな話をして、信頼関係を築いていければ、子どもにとって精神的なよりどころのひとつになっていくと思います。

●Q2:来てもらっても「会えない」場合は、どうすればいいのですか。

中2の息子ですが、中1の2学期から学校に行かなくなりました。理由は何もいいません。家の中ではとても元気で、外にも出ます。友達とは休み始めた頃は連絡をとっていたようですが、今では全く断ち切ってしまいました。ただ、大学生の姉とはとても仲がよくて信頼しているようです。今の生活がとても楽なようで、このままでは何も変わらないと思うと不安になります。男子大学生のフレンドメンタルフレンドにきてもらいたいとおもうのですが、息子はおそらく会わないと言うと思います。どうしたら良いでしょうか。

A2:「友達の友達」から関係を築いていく方法があります。

メンタルフレンドとかメンタルフレンドが来るといえば、嫌がる子どもが多いと思います。説教や説得をしに来る人、今の自分の生活を変えさせに来る人という警戒心になります。また、そんなものは必要ないという自尊心もあると思います。しかし、他人と関わるということを全くやめてしまえば、ますます外の世界へ出て行く接点をなくしてしまうと思われます。大学生のお姉さんと仲がいいということですので、お姉さんの友達を連れてきたという形で、最初はお姉さんも一緒に遊んだり、話したりしながら自然に関わっていくのがいいと思います。

●Q3:メンタルフレンドに不登校の経験者はいますか。

中3の息子はいじめが原因で、中学に入学して1ヶ月目くらいから不登校になりました。友達はひとりもいません。外出も一人ではしませんが、本を読むのが好きで、母親の私と一緒なら本屋には時々行きます。トカネットのフレンドメンタルフレンドの話をしましたら、自分と同じようにいじめから不登校になった経験のある人なら会ってみたいといっております。そういうメンタルフレンドもいるのでしょうか。

A3:います。多様な経歴・個性を持ったメンタルフレンドが在籍しています。

現在トカネットは小・中・高校生年齢の不登校・ひきこもりの人たちを対象にした大学生による『フレンドメンタルフレンド』と、20歳以上のひきこもりの人を対象にした『ソーシャルパートナー』で成り立っています。いずれも、不登校・ひきこもり問題に関心を持ち、何かしたいと思う人ばかりです。それと平行して、「フレンドメンタルフレンド」の中には中学・高校時代に自分自身も不登校の経験があり、今当事者の気持ちがよく分かるという大学生の登録も増えてきております。『ソーシャルパートナー』は今現在、仕事を持ち社会生活をしながら、こういった社会問題に心を寄せる人と、自分自身もひきこもりの経験があり、やっとその状態から抜け出せた人、そして心理学やカウンセリングを学んだ若いカウンセラーなどです。地理的な条件が可能な限り、子どもの状態に見合ったメンタルフレンドの訪問が出来ると思います。

●Q4:短期間の訪問もお願いできますか。

中2の息子はパニック障害を持っています。小学校4年生頃から人前に出ると極度の緊張をして、トイレも我慢をしてしまい、不登校になってしまいました。家の中のような安心できる所ではとても元気です。野球が好きでキャッチボールの相手をしてくれる人を欲しがっています。最初はかなり緊張すると思うので、慣れるまでは毎回短い時間でメンタルフレンドに訪問してもらいたいのですが可能でしょうか。時間的な規定を教えて下さい。

A4:時間的な制限は特にありません。

基本的には通常1回2時間と決めておりますが、仲良くなって話が弾んで延長したり、例えば映画を見に行ったり、バッティングセンターに一緒に行ったりと外出することもありますので、時間的な制限は特にありません。
息子さんのように緊張しやすいという場合には、慣れるまで1時間ぐらいからメンタルフレンドによる訪問サポートを始められるといいと思います。

●Q5:高校卒業を勧めて欲しいのですが・・・。

高2の娘ですが、将来喫茶店をやりたいという夢があります。高校を中退して、知人のお店に見習いに行きたいといっています。親としては、高校は卒業して欲しいと思っています。一人っ子なので大学生のお姉さんと話す機会でもあれば、考え方を変えてくれるのではないかと期待しています。高校は卒業するようにメンタルフレンドに説得してもらうことは出来るのでしょうか。

A5:お子さんの冷静な判断の手助けをできればと思います。

高校を卒業するようにと説得することは出来ないと思います。娘さんの人生ですから最終的には本人で決断をされるのがいいと思いますが、まだまだ未熟な年齢です。大学生のメンタルフレンドと関わることで、もう少し広い世界を知り、冷静な判断をする手助けにはなると思います。

●Q6:うつ病ですが訪問してもらえますか。

19歳の息子は人間関係が苦手で中2の夏ごろから不登校になり、高校へ入っておりません。ひきこもり状態が何年も続いたためうつ病と診断され、薬を飲んでおります。家の中では本を読んだり、テレビを見たりしております。最近話し相手を欲しがっているのですが、こんな状態でもメンタルフレンドに訪問してもらえるのでしょうか。

A6:医療機関と併用されることをお勧めします。

精神的な病気の場合、その重さや治療方法などによって、トカネットでは対応できない場合もあります。しかし長年他人と関わらなかったり、またいろいろなストレスが原因でうつ病などになった場合、その状態を理解しようとしてくれる人と少しずつでも関わっていくことが、症状をよくするための方法のひとつだと考えております。医療機関とフレンドメンタルフレンドを並行してされることをお勧めします。

●Q7:家庭内暴力的ですがどうでしょうか?

中学校3年不登校だった娘は、今年卒業しました。高校へは行っておりません。家族との会話はまったくなくて、必要なことはメモに書いて、娘のドアに挟んでおります。食事も家族とは一緒に食べないので、部屋の前に毎回置いております。自分の部屋から出てこないため、同じ家の中にいても何日も姿を見ないこともたびたびあります。女の子ですが、時々暴れてものを投げたり壊したりしているようです。母親の私は精神安定剤を常用しなければならない日々が続いております。家族だけではどうにもならない状態です。誰か他人の力を借りたいのですが、フレンドメンタルフレンドに来てもらうことは出来るでしょうか。

A7:まずは親子間のコミュニケーションを取り戻してから

他人に会いたくないという状態でも、メンタルフレンドの訪問はしております。しかし、ある程度の家族とのコミュニケーションが出来ている場合のほうが望ましいと思います。子ども自身のやり場のなさが、物に当たったり家族に当たったりするのだと思います。また、無意識のうちに家族からのプレッシャーや期待を感じ、それに対する怒りや不安がますます家族との距離を広げてしまうということもあります。家族が子どもに対して強く出ようが優しく出ようが、子どもにとっては常に自分のところに意識が集中しているのが重いということもあります。こうなってくると家中が悪循環になってどうしたらいいのか分からなくなってきます。

メモや手紙で親のほうから一方的に伝えたいことを書いて渡すというのも、こういう状態のときには良くあるケースです。伝える手段がメモや手紙しかない場合、どうしてもその内容に親の思いが含まれてしまいがちです。今、すぐにその思いに答えることが出来ない子どもにとっては、それを読むことでますます親との距離を置いてしまう可能性もあります。出来るだけ衣食住など日常生活に関する程度の内容を書かれることをお勧めいたします。

現在お母様自身がかなり精神的に不安定のようですので、家族の会などに参加されるとか、趣味をもたれるとか、旅行に行くとか、まず、家の中以外にお母様の居場所を見つけることをお勧めいたします。そうして、親子の精神的な距離を少しあけていくことで、お互いに今よりもいい状況が生じてくると思います。どんな形であっても子どもとのコミュニケーションが持てるようになれば、次の段階としてメンタルフレンドの訪問を考えていけると思います。

●Q8:週何回くらい来てもらえるのですか?

中3の息子は学校の先生と合わないことが原因で、中1の2学期から不登校になりました。長い間ゲームとテレビだけの生活でしたが、最近高校に行きたいと言い出しました。今までの勉強の遅れを見てくれて、相談相手になってくれる大学生がいたら来て欲しいと言っております。今までほとんど家族以外の人と関わっていないのですが、週何回ぐらいメンタルフレンドに来てもらうのがいいでしょうか。

A8:基本は1ヵ月に4回ですが、ケースバイケースで対応します。

最初は週1回くらいで始め、慣れてきて仲良くなれば少し増やすのが理想的な回数だと思います。週1回で1ヶ月に4回です。ほとんど家の中にいて外に出たり人にあったりしない状態の子どもにとって1週間に1回というのは、結構その間隔が長く感じられると思います。またいろいろな人と関わって影響を受けていくということも大切です。一人のメンタルフレンドと関係が作れたらもう一人サブとして訪問しております。逆に子どもの状態によって、1ヶ月に2回ぐらいから始めていくケースもあります。

●Q9:海外の高校を希望するのですがどうでしょうか?

16歳の息子は学校の雰囲気が合わないという理由で、中1の2学期から不登校になりました。小学校3年生まで父親の仕事の関係でオーストラリアにいました。そういうことも影響してか、最近日本の学校は行きたくないけれど、海外の高校に留学したいと言っています。家の中では元気で、家族とも良く話しますが、学校へ行かなくなってから友達との関わりもなく、いろいろな面で親としてはすぐに息子を一人で海外留学させるというのはとても心配です。どうしたらいいでしょうか。

A9:海外への留学ケースもあります。

不登校やひきこもりの状態の子どもが何かをしたいという意思表示をするというのはとても大切な時期だと受け止めてください。それがアルバイトであっても、ボクシングを習いたいというようなことであっても、たとえ親から見てそれが今の子どもの状態では実現不可能なことと思われても、肯定的に受け止めてあげて欲しいと思います。子どもが何かをしたいと思い申し込みをして、その直前に行けないという状態になってしまったとしても、子ども自身が今の環境から何とか抜け出したいと思う気持ちがあることを認めてあげるのが大切です。

トカネットでもフレンドメンタルフレンドと関わりながら、何度も何度もそういう状態を繰り返して、最終的に海外の高校へ留学したケースが何件かあります。日本では家の外へ一歩出ることさえ不安だった子どもが開放感を感じ、友達も出来てのびのびと生活しております。広い世界に出て人生観が大きく変わったという報告も受けております。ご家族も不安だと思いますが、日本を出るまで一番不安なのは子ども自身だと思います。現地で語学のクラスがあるため、英語力はなくてもいいと聞いておりますが、フレンドメンタルフレンドなどを利用して少し英語に慣れておくことも安心感につながっていくと思います。人間は一人でいろいろ考えているとどうしても不安になってしまいます。希望の高校の入学式まで何ヶ月かある場合には、いまの状態を肯定してくれる人と少しでも関わることをお勧めします。

●Q10:高卒認定試験(旧、大検)を受けると言うが、気力がなくなっています。

学校が合わなくなって高1で中退した息子は高卒認定試験(旧、大検)を受けたいといって、一人で勉強をしていました。しかし、教科数も多く、なかなか一人では気力が続かなくて、最近は勉強もしなくなってきました。高卒認定予備校も勧めましたが、行く気がないようです。高校を辞めて5ヶ月近くになります。最近は昼夜逆転になり、起きているときはテレビとゲームだけの生活です。だんだん無気力になっていく息子を見て不安な毎日です。親として今は息子にどう接したらいいのでしょうか。そしてまた、勉強を一緒に見てくれるメンタルフレンドはいるのでしょうか。

A10:学習面でのサポートと、メンタルフレンドとの交流で、良い意味での学習刺激を。

息子さんが高校を辞めたときに高卒認定試験(旧、大検)を受けようと思ったことは本心だったと思います。ただ、一人で何かをやり続けるということは、強い意志が必要です。楽なほうへと流されてしまい、夢をあきらめてしまうことはよくあります。息子さんも、そういう状況の中で今の状態にあるということを、ある意味では当たり前だと肯定してあげてください。高卒認定を受けるという目標を見失って、これからの自分を一番不安に思っているのは、息子さん自身だと思います。その不安から逃れたいために、テレビ、ゲームや、昼夜逆転という形で自分を出来るだけ楽な状態においているという面もあると思います。そういった子どもの様子を見て、親はどうしてもあせりますが、今はそのことに触れて欲しくないのが、息子さんの本心だと思います。子どもが自分自身のことを冷静に考えるための休息の時間と考えてみてはいかがでしょうか。親に出来ることはその期間にあまり今後の話はしないで、それ以外の話題で出来るだけ明るく子どもとコミュニケーションが出来る雰囲気作りをお勧めします。

親からのプレッシャーを感じなければ、子どもは家の中ではリラックスできます。親子のコミュニケーションを保つことが出来れば、今の状態を余り長期化させないために、次の段階に進めていく可能性が生じてきます。息子さん自身も高卒認定試験を受けたいという思いはまだ消えていないと思いますので、タイミングを見つけてフレンドメンタルフレンドの訪問をお勧めします。

現在トカネットでは、メンタルフレンドと平行して高卒認定試験の勉強を一緒にしたり、通信制高校のレポートを手伝ったり、教科書の遅れを取り戻すために勉強したりと、学習面でのサポートもしております。親はどうしても勉強の面を最優先に考えてしまいがちですが、これは本人の自発的な意思がある場合が理想的です。精神面が伴っていない場合は、目的もなく勉強をすることが苦痛になり、メンタルフレンドに会うことも拒否してしまいます。また、本人の意思で勉強をする場合でも、不登校の子どもにありがちな、人と関わる力の弱さや自信喪失などの精神面でのフォローは必要です。そういった意味で勉強だけを見るのではなくて、話し相手になったり、一緒に遊んだり、外出したりしながら、学習刺激をしていくというのが、トカネットの特長です。

●Q11:ひきこもりで26歳になります

息子は中2から不登校になり、高卒認定試験を目指したり、アルバイトを少ししてみたりという時期もありました。結局何一つ長続きせず、就職もしないまま現在26歳でひきこもりでいます。長い年月の間にはいろいろと葛藤があり、もめたり、暴れたりしたときもありました。今では、それも通りすぎ、仕事をしないということ以外は家族とも普通に会話して暮らしております。ただ親戚も含めて他人には決して会いません。主人が定年退職をして、家にいます。親がいつまでも若くて元気でいられたらいいのですが、そうも行きません。今後のことを考えたら不安でしょうがありません。何かアドバイスをお願い致します。

A11:家の中に「外の風」を入れることが大切です

最近、20代・30代のひきこもり状態の子どもを持つ親からのご相談がとても増えております。ほとんどが中学・高校時代からその状態が続いているケースです。今でこそ、不登校・ひきこもりという言葉が社会に広まっていますが、10年以上前になりますと、情報も少なく、相談する相手もなかったという実情を聞いております。とにかく、待つという選択肢しかなく、子どもだけではなく家族もいつの間にか社会から孤立してしまうという結果につながっているケースが多いように思われます。不登校情報センターに友達を求めてやっと出てこられるようになった若者の自助グループがあります。20代・30代が主ですが、30歳前後の年齢が特に多いように思います。10年以上ひきこもりでいたけれど、高校卒業資格が欲しいと思うようになり、通信制高校に入学した20代後半の青年もいます。彼らがどうして外に出られるようになったのかはそれぞれ違うと思います。

いつまでも家の中に一人で閉じこもっていてもどうにもならないと思ったことは共通していると思います。すぐにアルバイトをしたり、就職をするというのは難しくても、自分を受け入れてくれる人や居場所があれば、会ってみたいし行ってみたいと思うようになったということは確実です。ではどうすればそこまでなれるのか。いろいろな情報やきっかけをシャットアウトしてしまっている状態の息子さんに、すぐにそれを求めても無理でしょう。言葉でいくら言っても難しいと思います。その前に家族全員の流れを変えることが必要だと思います。そのためにお父様やお母様がパソコンを習うなどの何らかの名目を作り、メンタルフレンドの訪問を受けることをお勧めします。あくまでも本人に会いに行くのが目的ではないという形作りが大切です。

他人が家の中にはいるということは、今までなかった新しい風を家庭の中に入れるのです。家族全体が社会から孤立していた状態を、親が出来ることから少しずつ変えていきます。最初は子どもとの摩擦があるかもしれませんが、親のところに来ている人という形で続けることに意味があります。時間がたてば子ども自身も自分に直接関わりのないことであれば、他人が家の中に来ているということに違和感が無くなって来るものです。そうなれば警戒心も無くなり、親が話すその人の話題にも耳を傾けるでしょうし、家の中でばったり会えば挨拶くらい交わすかもしれません。とても遠回りの方法のようですが、そうやって他人との接触を作っていくことで子ども自身が情報を得たり、新しい話題を耳にする可能性が出てきます。このやり方で子どもとメンタルフレンドが仲良くなり、外出できるようになったケースもあります。ひきこもり状態から外に目を向けさせるには、どうしても他人の介入が不可欠だと思われます。そしてそこからまた、次の段階へと進む可能性が生じてきます。

●Q12:一人住まいでひきこもり的な17歳

17歳の息子は人間関係が苦手で、中2から不登校になりました。家の中にいても、物を壊したり、喧嘩が絶えませんでした。3ヶ月前から本人の希望でアパートを借りて一人暮らしをしています。最初は高卒認定試験の勉強をするといっていましたが、すぐに挫折してしまいました。1週間に1度食料品を届けに行っておりますが、会うたびに顔色が悪く、目つきも鋭くなっています。アパートから1歩も外に出ず、1日中家の中でテレビを見たり、寝たりしているようです。親とは必要最小限の会話しかしません。息子のところへフレンドメンタルフレンドに訪問してもらいたいと思うのですが、親が行くときでも、本当に親だと分かるまで絶対にドアを開けません。どうしたらいいでしょうか。

A12:まずは親子間のコミュニケーションの回復を

ひきこもり状態の子どものほとんどが他人に会いたがりません。アパートで一人暮らしの場合、メンタルフレンドが訪問してもドアを開けて会うという可能性は極めて少ないと思います。このケースの場合、他人と関わるという以前に、家族との交流が少ないことのほうが心配です。家族と一緒に暮らしている場合は、例え自分の部屋に閉じこもっていたとしても、お風呂やトイレなど共有の場があるので何らかの形で家族の気配を感じていられます。家族の話している声も聞こえるので、全く会話がない状態でも心のどこかで安心している部分があるはずです。おそらく子ども自身は気付いていないと思いますが、それがあるとないのではずいぶん違います。

アパートで、たった一人でひきこもりでいる状態が長引けば、不安や孤独から自力で抜け出すことはますます困難になってきます。その状態から明るい希望が見えてくるとは思えません。顔色や目つきが悪くなってきているというのが気になります。例え喧嘩をして暴れても、まず自宅に戻すことをお勧めします。そして暴力的でけがが心配になるほどの特殊なときを除いて、親は子どもから逃げないで、真正面から受け止めて欲しいと思います。時間をかけて、まず親子のコミュニケーションを作るようにしてください。そうなればメンタルフレンドの訪問も可能になると思います。

●Q13:兄弟で不登校ですが、一緒に見てもらえますか?

中3の息子が半年前から不登校になりました。野球部での人間関係が原因でした。家で1日中ゲームをしている姿に影響されて、小学校6年の娘も2ヶ月前から不登校になりました。妹のほうは時々教科書を見たりしていますが、2人で1日中遊んでいます。私もパートをやめて家にいるようにしましたが、子どもたちのことを考えると夜も寝られません。すぐに学校に戻れなくても勉強はみんなに遅れない程度にして欲しいと思っています。どうしたらいいでしょうか。メンタルフレンドをお願いした場合に同時に2人の子どもを見てもらえるでしょうか。

A13:できます。まずはご兄弟のどちらか1人へメンタルフレンドを派遣します。

兄弟で不登校になるというのもよくあるケースです。気質、体質的に似ているというのもあるかもしれませんが、それよりも、1人が行かなくなれば、どうして自分だけ学校へ行かなくてはいけないのかと思うのでしょう。家で1日中好きなことをしているほうが、学校へ行くことよりも楽だと思えるのでしょう。幸い、妹さんが教科書をときどき見ているということですので、学校や勉強のことが少しは気になっているのだと思います。今のうちにまず妹さんのところへ女性のフレンドメンタルフレンドをお勧めします。一緒に遊んだり勉強を見てくれたりするお姉さんが来るという言い方がいいと思います。勉強だけをするというのは、子どもにプレッシャーを与えてしまう可能性がありますので、最初は一緒になって遊び、仲良くなって信頼関係を作るという期間が必要です。そして少しずつ勉強も取り入れていくというのがいいでしょう。

お兄ちゃんのところにも時々声をかけて3人で一緒に遊ぶ時間も必要です。そしてメンタルフレンドとお兄ちゃんとの信頼関係も同時に築いていきます。そのうちタイミングを見て、メンタルフレンドの友達を連れてきたという形で男性のメンタルフレンドをお兄ちゃんに会わせるのがいいと思います。もちろん最初は4人で遊ぶという形から入っていきます。男の子はやはりキャッチボールをしたり、野球を見にいったりできる相手が必要です。そうして仲良くなっていけば、自分を受け止めてくれる人がいるという自信がついてきます。もしどちらかが先に学校に戻ることが出来れば、もう一人も戻るという連鎖反応も期待できます。

●Q14:現役大学生で友達のいない不登校の私ですが、メンタルフレンドを依頼できますか?

私は今年大学に入学した19歳の女性です。人間関係が苦手で中学高校時代も友達はほとんどいませんでした。大学に入れば何とかなると思っていましたが、語学や専門の授業には中学・高校のときのようにクラスがあって、グループで発表したりみんなの前で名指しで当てられて答えたりしなくてはなりません。とても緊張して教室から逃げ出したくなります。サークルにも入ってみましたが、最初の新入生歓迎コンパの段階でみんなのように楽しく騒いだり出来なくて自分の周りだけとても暗い雰囲気を作ってしまい、途中で帰ってきてしまいました。結局学校に行けなくなり、半年が過ぎて2年生に進級できないことになっています。今のような精神状態では学校に行くことが出来ないので、退学を考えました。私には子どもの頃から通訳になりたいという夢があり、必死で勉強して英文科に入学しました。それをあきらめることもまだ出来ません。自分の気持ちを聞いてくれて、同時に友達のような存在の人が一人でもいてくれたらと思います。私も大学生ですが、学生メンタルフレンドに来てもらうことは出来るのでしょうか。

A14:社会経験のある社会人のメンタルフレンドとの交流をお勧めします。

大学生で不登校になるというご相談が最近増えております。小・中・高校でも、大学でも、または職場でも、基本的に必要とされるものは人間関係を保つ力です。大学の場合、小・中・高校に比べて余り拘束されない自由な形態ではありますが、全く他人と関わらないで学校生活を送るということは不可能です。受験勉強から開放されて毎日が楽しくてしょうがない人ばかりのように思えるかもしれませんが、決してそういう人ばかりではないと思います。いつも一人で昼食を食べている人、地方から出てきて家族と離れてさびしい思いをしている新入生、学費を自分で稼いで学校へ行っている学生、いろいろな人たちが大学にもいるはずです。みんな自分のおかれた状況の中で精一杯生きています。幸いあなたには通訳になりたいという素晴らしい夢があります。その夢をもっともっと大きく持ってください。それが必ずあなたの自信につながっていきます。そのために、できれば現役の大学生ではなく、社会経験のあるメンタルフレンドと関わることをお勧めします。どんな方面からでも少しずつ自信が持てるようになっていけば、他人と関わることが怖くなくなっていくはずです。

●Q15:トカネットの親の会はどんな活動をしていますか。

トカネットの親の会は、どういった活動をしているのでしょうか。

A15:毎月1回、10代~40代の親の方を対象に行っております。

トカネットの親の会は、基本的に毎月1回、10代~40代の子どもの親の方を対象に、訪問サポートを含めて、社会参加につなげることを、専門家と一緒に考えています。

●Q16:メンタルフレンドの変更は出来ますか?

トカネットにメンタルフレンドをお願いした場合、子どもに会う前に親がメンタルフレンドに会って話をする機会はあるのでしょうか。また、子どもとの相性が合わない場合に、メンタルフレンドの変更は出来ますか。

A16:メンタルフレンドの変更はできます。

メンタルフレンドと子どもを会わせる前に、自宅以外の別の場所で親とメンタルフレンドが会って話をする機会を設けています。今までの子どもの様子やこれからの打ち合わせなどを、双方で十分に話し合っておくことが必要だと思います。今後サポート活動を続けていく中でもそういう機会を持つことが大切です。また、メンタルフレンドと子どもの相性が悪い場合にはメンタルフレンドの変更をしております。

●Q17:子どもは本当に変わりますか? どれくらいの時間で?

子どもたちがメンタルフレンドと関わってどのように変わってきているのでしょうか。具体的に教えてください。またどれくらいの時間で変わってくるのでしょうか。

A17:結果は自然とついてきています。時間はケースにもよります。

トカネットは不登校・ひきこもりの子どもを対象に1998年からメンタルフレンドによるサポート活動をしております。メンタルフレンドが集まってそれぞれの成功例・失敗例を話し合い、家族の会を設け、活動発表・体験発表などを繰り返してきました。そして、外へ出られない、他人と関われない子どもに、社会との接点としてどうしても必要なスタイルとして、「訪問サポートトカネット」が出来上がりました。この間に保健室登校から始めて、学校に戻れた、転校して登校できるようになった、高卒認定(前の大検)の勉強を始めた、高卒認定に合格した、全日制高校に入学した、海外の高校に留学した、通信制高校に入学した、アルバイトを始めたなどの具体的な結果が多数出てきました。今まで家族以外と全く接触のなかった子どもがメンタルフレンドとは話せるようになったり、ゲームやキャッチボール、外出などを一緒にして少しずつ元気や自信を取り戻している段階、進学をしたいと考えるようになり小学校の勉強からやり始めた19歳の子ども、いろいろな状態があります。

それぞれの子どもの状態や、不登校・ひきこもりの年月によって課題も違いますし、それをクリアーしていく期間も異なります。どうしても親は目に見える結果を早急に求めてしまいますが、心の奥深い部分の回復には決して特効薬はありません。誰にも会わなかった子どもが人に会うようになった、誰にも心を開けなかった子どもが楽しく話せるようになった、外に出なかった子どもが外出した、今まで笑わなかった子どもが大声で笑うようになった。その少しずつの変化を肯定してあげてほしいと思います。元気や自信や笑顔が本当に戻るまでのプロセスがあればこそ、自然に結果がついてくるものです。

●Q18:訪問サポート・メンタルフレンド活動の意義、活動内容、必要性を教えて下さい。

A18:自分を受け止めてくれる人が一人でもいれば、人は外の世界に出て行くことが出来るのです。

■親が求めているのは子どもを説得する方法

どうしたら子どもが学校へ行くようになるのでしょうか、どうしたら就職して社会に出られるようになるのでしょうか。そういう親のご相談が圧倒的に多いと思います。その質問の意図するところは、親が子どもに対してどういう態度で接して、どういう言葉をかけたら子どもが分かってくれるのでしょうかということだと思います。言い換えれば、親が子どもを説得するいちばん良い方法を知りたいということではないでしょうか。

■家族以外の人間と関わることが自立の原点

人は生まれてから成長して、そして自立して生きていくわけですが、そこで家族と社会という二つの環境を常に必要とします。衣食住を基盤として精神的なよりどころとなるのが家族の役割ならば、自立を促すのが社会の役割だといえます。このことは、その度合いは違うとしても、保育園・幼稚園に行きだした幼年期から存在していると思います。学校へ行くとか働くということは、家から外に出て他人と関わるということですから、それは家族ではなくて社会での位置付けになります。ここでいう社会というのは学校や職場だけではなく、地域社会や友達や近所の人、親戚やコンビニの店員など自分に関係のない一個人まで含まれます。家族以外の人たちと関わっていくことが、自立の原点だと思います。

■家族は自立を促す要因にはなり得ない

何らかの理由で自信をなくしてしまい、対人恐怖になり、家の中にひきこもり、友達もいなくなってしまった人たちは、社会との接点を何も持たない状態にあります。その状態が長引けば、自力で社会に出て行くことはなかなか困難です。そこで家族が本人に対していろいろと説得や説教のような形で押したり引いたりするわけです。基本的に家族という立場は、自立を促すという要因ではないのです。家族だけで何とかしようとしても難しいのです。またどうしても家族は本人に期待をかけてしまうため、結果的にプレッシャーを与えてしまうことにもなってしまいます。そうなればますます外に出られなくなっていきます。家族以外で自分を認めてくれる人、自分を受け止めてくれる人が一人でもいれば、人は外の世界に出て行くことが出来るのです。トカネットの役割はその部分にあると思っています。

■人と関わることで発生するエネルギー=「気力・元気・自信」が無いと人は動けない

人が生きていくのに必要な活力=エネルギーは、大きく分けて二つあると言われます。ひとつは、人と関わることで発生するエネルギー。もうひとつは太陽のエネルギーです。私たちは、普段無意識にその両方のエネルギーを吸収して活動しています。しかし、不登校・ひきこもりの人たちの場合、その両方ともない場合が多いです。他人と話さない、外に出ないという生活だからです。その期間が長引けば長引くほど、活動するためのエネルギーが低下していきます。周りから見れば怠けているように見えるかもしれませんが、ガソリンのない車と同じで、頭でいくら分かっていてもどうしても動けないのです。ではどうすれば活動できるようになるのか。エネルギーを補給すればいいのです。気力や元気、自信という形で活動エネルギーが満たされていけば、自らの意志で考えて行動する力となっていきます。

■子どもの状態に根気強く付き合う訪問サポーター・メンタルフレンドの存在が重要

トカネットの訪問サポート・メンタルフレンド活動の役割はその部分だと思っています。学校へ行かせるとか、就職させるということではありません。それは本人が自分で決めることです。自力で進路を考えて行動できるようになるまでのエネルギーの補給の段階です。最初は子どもの状態を分かって受け止めてくれる人が一人いれば十分でしょう。それが自立を促す社会との接点になるからです。大切なことは、友達に替わる存在として関わっていくことです。しかし同世代は比較対象となるため、少し年上がいいと思います。小・中・高校生年齢なら、大学生メンタルフレンドでしょう。話し相手やゲーム等の相手として入っていくことがほとんどです。もちろん勉強の遅れを気にしている子どもの場合は、勉強を一緒にするという形から始めていいと思います。そこでメンタルフレンドは「どうして学校へ行かなくなったの?」「学校へ行ったほうがいいよ」という類の話は一切しません。説教や説得をしに来た人ではないということを分かってもらう必要があるからです。そして他人に対する警戒心を取り、信頼関係を作っていく期間が必要です。そのためには子どもが一番好きな遊びや楽な状態に根気良く付き合うことが大切です。

そして今日一日楽しかったと思わせることを最初の目標とします。自分にとって害のない人、何も言わずに一緒に遊んでくれて楽しい気分にさせてくれる人ならば、他人であっても会いたいと思います。時間をかけて信頼関係が出来ていけば、今度は外に連れ出すことを目標とします。キャッチボールをする、散歩をする、映画を見に行くなどの形でメンタルフレンドと一緒に外に出ることの楽しみを感じる期間です。今までのように人目を気にするなどの理由で引きこもり気味だった状態を変えていくためです。この頃になれば、かなりエネルギーが向上していると思います。

■“自分”を持ち、自分流の生き方のスタイルを身につける一助としてのサポート

親に話せないような自分の気持ちをメンタルフレンドに話せるようになり、いろいろな相談もするようになります。子どもの成長、自立にはこういった相手が必要です。通常は、それが友達や先生の役割だと考えられます。他人と関わることで子ども自身が自分の気持ちを整理して、自分はどうしたいのかを明確にしていくことができるのだと思います。これは家族以外の他人が自分の存在を肯定してくれることが大きな要因になっていると考えられます。一人の人と対等にきちんと関われるようになるということは、“自分”を持つということです。自分がなければ対人関係はどうしてもうまく行きません。トカネットの役割は、不登校・ひきこもり状態で自信をなくしてしまっている子どもたちが“自分”を持ち、そして自分流の生き方のスタイルを見つけるまでのサポートです。親が出来ることは、他人に会いたがらない子どもにどうやって社会との接点になる他人を会わせるかです。そのためには出来るだけ子どもに居心地がよくて、親子のコミュニケーションのある家庭を作ることが大切ではないかと思われます。

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